~先入観を捨てて子どものやっていることを見る~
子どもを理解するためのファーストステップは、「事実を見る」ことです。
「見る?たったこれだけ?そんなことやっています」と思われる方も多いようです。カウンセリングにいらしたママも目を丸くして「できます!やっています」とおっしゃいます。
「では、今、気になっている、お子さんの課題を“事実”で話していただけますか?」と伺ってみると、事実ではなく先入観でお子さんを見ていることがわかります。
実際の例でご紹介します。
小学4年生の子をもつママ
①「いつもいつも、朝起きるのが遅いんです」
小学1年生の子をもつママ
②「前の日に学校の準備をすればいいのに、全然やりません」
4歳の女の子のママ
③「偏食でいつも野菜を残します」
この3人の例では、どれも「事実」を話してはいません。こうしてほしいという願望や決めつけなどの、ママの先入観が入っています。では、「事実」を伝えるとはどういうことかを、①~③の例で「事実」に置き換えてお伝えします。
①「いつもいつも朝起きるのが遅いんです」
→「7:00に起きると言ったのに、先週は月曜日と水曜日と、金曜日に7:30まで寝ていました」
②「前の日に学校の準備をすればいいのに、全然やりません」
→「学校に行く日の朝7:20に、学校の準備をママと一緒にやりました」
③「偏食でいつも野菜を残すんです」
→「プチトマト2個が皿の上に乗っている状態で『ごちそうさま』と言いました」
いかがでしょう?「事実を見る」というのがどんなイメージなのかはおわかりいただけたかと思います。
それでは、どのように捉えると「事実」を伝えられるのか、やり方をお伝えします。
まず、①~③のお子さんの状況を写真に撮った後、それを他の人に手渡す様子を想像してください。その写真の状況を「他人が見ても、具体的に言葉にできること」。それが、「事実」です。
①の例では、7:30を指した時計と寝ている子どもが写っています。それを手渡された人が、「いつもいつも、朝起きるのが遅い」と言うでしょうか?
“いつも”は事実ではないので取ってくださいね。
②では、7:20にママと一緒に学校の準備をしている様子が写っています。見せられた人が「寝る前に準備すればいいのに、それをやらずに翌朝、お母さんと学校の準備をしている」と説明するでしょうか?
「○○すればいいのに、それをやらずに」は取ってくださいね。
③の写真は、皿に残ったプチトマト2個です。その写真を見て、「この子は偏食で、いつもトマトを残している」と言うでしょうか?
「偏食」「いつも」は取ってくださいね。
③のトマトの例で「事実は何か」を伝えたときに、教わったママさんは「そっか。なんだか裁判みたいですね」と言いました。そうです。裁判所で使う言葉です。
「裁判長!今の言葉には、憶測や誘導が含まれ、事実無根です!」なんて、言われてしまいそうな発言は、事実ではないと思ってください。
「いつも~」「~すればいいのに」という言葉には、親の先入観や価値観が入っています。是非これからは、「事実を見る」トレーニングにトライしてみてください。何度かやってみると、いかに親が「こうなってほしい」と、子どもの行動事実を曲げているのかを感じていただけると思います。
こうした先入観が入ってしまうのは「親としてこうあるべきだ」と理想像があって頑張るためなので、私もまだまだ事実を曲げてみてしまうことがあります。その度に一生トレーニングだなと思います。
それでも、15年以上事実を見る訓練をしてきたことで起きたことを冷静に見ることができるようになりました。心がそうそう乱れません。私の中では、「出家したぞ」と思います。楽になります。トレーニングしましょう。
最後に、事実をもとに子どもとどのように会話をすればいいのかを、私の体験談を通してご紹介します。
三つ子の長男、陸(りく)が13歳の頃のことです。彼は「遅刻常習犯」といわれるほど、よく遅刻をしていました。
私 「ねえ、いつも遅刻じゃない」
陸 「いつもじゃねえし。(ぷいっ)」
子どもがそっぽを向いてしまいました。それを反省し、翌日、事実に変えて話してみました。
私 「ねえ、8:00に学校がスタートなのに、今8:00に家にいるよ。朝ごはんを食べているよね」
陸 「ああ。そうだなあ。遅刻だな・・・」
そっぽを向かずに素直に聞いてくれていますね。
「いつも」と決めつけてしまった場合には、息子も感情的になって反発しますが、「事実」に対してはそれを認め、自分で考えるようになります。ぜひ、トライしてみてください。